Workshop Reports

May 10, 2020

参加者レポート
2020年度第1回レギュラー・ワークショップ
「移住者が起こす地域イノベーション」

本ワークショップは、2020年度の最初のワークショップとして、東京大学山中寮(内藤セミナーハウス)において2泊3日の合宿形式で行う予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、土日を2回使う4日間のオンライン合宿に予定を変更して実施しました。

テーマ:移住者が起こす地域イノベーション
ファシリテーター:堀井秀之(i.schoolエグゼクティブ・ディレクター)
日程:2020年4月25日(土)-4月26日(日)、5月2日(土)-3日(日)

【2020年度 WS1 DAY1(4/25)】
ワークショップ1のテーマは、「移住者が起こす地域イノベーション」であり、ゴールは「ある地域の課題、魅力を踏まえてその地域に移住した移住者が起こすイノベーション、新しくて有効な事業、改革のアイディアを創出する」ことです。

一日目であった 4月25日は、アイデアの発想の準備段階として、事前資料として提供されていたインタビュー動画と移住者・地域イノベーション事例集の分析を班ごとに行いました。

インタビュー動画については、未来の移住者に関する示唆を得ることを目標に、廃校寸前の高校を全国から生徒が集まる学校に生まれ変わらせた移住者である岩本悠さんの証言の分析を行いました。また移住者・地域イノベーション事例集に関しては、それぞれのイノベーションの効果、成功の要因、移住者が果たした役割、移住者の原動力について分析しました。

今回のテーマにおいて、「移住者」とはどういう人なのかということを考察することの重要性は、二日目のアイデア発想とその評価を通じて実感しましたが、一日目の時点では、まだその考察が具体的にどうアイデア発想に繋がるのかというイメージがついていませんでした。そのため班で分析をしていても、どの程度の抽象度まで考察するべきなのか、自分の中で迷いが多かったように感じています。

今後は、準備の作業がアイデア発想にどう繋がっていくのか、より想像力を持って取り組んでいきたいと思いました。
また、ワークショップが進んでいくなかでも前の段階に立ち戻る時間を取ることの大切さも感じています。

信夫 あゆみ
2020年度i.school通年生
東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 修士課程4年

【2020年度 WS1 DAY2(4/26)】
WS1 DAY2のワークショップでは、選定した地域の課題・魅力・特性と、地域で起きたイノベーション事例の分析を組み合わせることで、イノベーションを起こすアイデアの発想とそこから出たアイデアの評価を行いました。その後、なぜ良いアイデアを出すことができなかったのかということを明らかにするために、出てきたアイデアの問題点を考えました。そして、その問題点を解決するために、今までのプロセスのなかでどのプロセスを再度やり直すべきかの議論を行いました。

以上をまとめると、アイデアを発想するための一連の流れを経験した上で、より良いアイデアを出すために次はどうすべきかを考える、というアイデア発想のPDCAサイクルを1回経験しました。

感想としては、アイデアが出てきて楽しいものの、非常に、本当に、疲れました。今までの人生の中で経験したことのない頭の使い方(イノベーション事例の抽象化、アナロジー思考によるアイデア発想、アイデアの評価基準の議論、アイデアの評価、アイデアの問題点の抽象化、より良いアイデアを出すためのプロセス設計etc)をしていくこと、と、議論を進めるための意思決定を連続して行っていくこと、が必要なワークを3時間×2回行うのは本当に大変でした。

ただ、このワークショップの経験を通して、まだ自分がやっていることを抽象的に捉え切ることはできていないものの、具体と抽象を往き来する、議論そのものと議論をどのようにして進めるのかを決めるための議論を往き来する、分析ではなく発想を行う、など非常にいい経験が積めているのかなと思います。

今日のワークで最も大変だったのは、アイデアはたくさん出てきて悪くはないものの、何かパッとするアイデアがないという状況に陥った時です。自分たちではその理由を見つけることができずアドバイスを求めた所、その一番の理由としては、どのような過去・思い・目的・課題意識・性格を持った移住者なのか、という所の具体性がはっきりしていないからということでした。移住者の特性をはっきりさせれば、この移住者ならこの地域のこの社会課題を間違いなく解決してくれるだろうという納得感が生まれる、ということです。自分たちはどちらかというとどんな事業・ビジネスモデルにすればうまくいくか、ということに着目し過ぎており(もちろんこれも大事なのですが)、今回の「移住者が起こす地域イノベーション」というテーマを踏まえることや「人」の重要性を認識することができていなかったように感じます。

次回は、主にこの観点を踏まえて2回目のPDCAを回せればと思います。
また、今回のワークショップはCOVID-19の影響で全てオンラインとなってしまいましたが、議論を行う上でオンラインであることのメリットもあると感じました。対面だと議論が白熱し過ぎて何の話をしているのかわからなくなってしまうということがあるように思いますが、オンラインであればAPISNOTEと呼ばれる情報共有ツールの画面を見ながら議論を行わざるを得ず、少し冷静に議論を進めることができているように感じます。

加えて、この1年間オンラインでの議論の経験を積むことで、どのようにすればオンラインでうまく議論を進めることができるのかのノウハウの言語化することができれば、今後に活かせて非常に良いなとも思います。

熊田 周
2020年度i.school通年生
東京大学大学院 工学系研究科
技術経営戦略学専攻(松尾研究室)修士2年

【2020年度 WS1 DAY3(5/2)】
「どのような内容だったか」
9:00-12:00 セッション④
・アイディア発想の再準備
Day2でのやり直しの設計を元に、今日までに各チームがアイデアの再発想に必要な準備をしてきました。
まず事前準備について各班ごとに準備内容を発表することからDay3はスタートしました。
私たちの班では、よりモチベーションにフォーカスをした移住者像の分析および選定したまちの課題・魅力の深掘りを準備として行ないました。

発表の中には、どんな移住者がイノベーションを起こすのか知るために、「偉人」に着目して調べてきていた班もありました。

・アイディアの再発想
いよいよ事前準備を元にアイデアの再発想に移りました。

私たちのグループでは、初回と同様、移住者によるイノベーション事例と選定地域の課題・魅力を結びつけた強制発想をベースに、未来の移住者という観点も新たに含め、アイデアを再発想しました。

そしてセッション④の最後に、アイデアの再発想の結果を全体で共有しました。
特に、未来=価値転換が起こると仮定してアイデアを再発想した班が印象に残りました。

13:00-16:00 セッション⑤
・アイディアの再評価、精緻化
続いては、再発想したアイデアを評価し一つに絞りました。

アイデアの再評価では、Day2でのアイデアの評価の仕方を引き継いだところ、新しい選定のやり方を導入した班もあったと思います。
私たちの班では、より尖ったアイデアが新規性に繋がると考え、評価軸を決めずに、個人で1人2アイデアを選び、その中から比較・検討を行ないました。

しかし、出てきたアイデアはどれも、この移住者がこの地域に行くからこういうイノベーションが起こるのだという一連の流れが十分に繋がっていない、必然性がないように感じた。

(そこで、これは私たちのグループのみだと思いますが、「2回目」のやり直しの設計およびアイデアの再発想を行ないました。せっかくなので、記述しておきたいと思います。)

「2回目」のやり直しに当たって、より社会全体で解決が必要な課題にフォーカスしたアイデアを出したいと共通の認識が取れました。
そこで、未来の社会全体において解決しなければいけない課題を個人で列挙しました。

さらに、その中から、AIを利用した産業の効率化など「今誰かが先導に立たなくても実現に向けた大きな流れがすでにできている課題」と、東京の一極集中の解消、地方分散化など「誰かが先導して解決する必要がある課題」を分けて、後者に取り組むことにしました。
そして、以下の5つをアイデアの詳細として記述することを取り決め、個人でアイデアを再発想しました。

5つの付箋に記す内容:「新しい地域イノベーションの概要」「それを実現する未来の移住者像」「その移住者が解決したいと願う社会全体の課題」「取り組む選定地域の課題」「用いる地域のリソース」)

どの班も苦労の末アイデアを一つに決め、発表に向けて論点を洗い出し、詳細を詰めていく作業を行ないました。
論点の洗い出しでは、個人ワークで論点を出し、近い内容ごとに分類しました。
各論点に個人ワークでポジティブ・ネガティブコメントをつけて、一つひとつチーム内で認識の擦り合わせ、および方向性を意思決定していきました。

・プレゼンの準備
私たちのグループでは、準備に取り掛かる時点で12時を回ってしまい、そこでスライドごとに分担を決めて宿題とました。
翌日の朝に各スライドの整合性を取りました。

「どんなことを学んだか」
一番大きな学びは、自分たちのアイデアを他者に評価してもらうことが必要性を真に感じました。

これは反省になってしまうが、初めてのWSということもあり、ずっと自分たちだけで議論していると目指すべきアイデアの基準が分からず、いざ他の人が見てみると、具体性に欠けていて実現可能性が見えないなどの問題点が明らかになりました。

Day2と今回のアイデア発想で出てきたアイデアの質が似ていたため、Day2からDay3のやり直しは上手くいきませんでした。Day2のアイデア評価の段階で、もしそのようなフィードバックをもらっていたら、アイデアの足りない部分を把握した上で、効果的なやり直しの設計ができたと思います。

「その他感想」
私たちのグループでは結果、アイデア発想を4回行なった。それでもまだ自分たちで納得できるアイデアが出ていないと感じました。

アイデアの発想を途中で妥協して、精緻化やプレゼン準備により時間を使うことはできたかもしれないが、納得いくまでグループで連携して、最後まで良いアイデアを追求することができたのは、チームで団結できていた証拠なのでよかったと思います。

一方で、アイデアを精緻化することでより良いアイデアに近づくこともあると思うので、次回は出てきたアイデアで勝負する方向にもチャレンジしてみたいです。

森山健一
2020年度i.school通年生
東大工学部システム創成学科知能社会システムコース3年

 

【2020年度 WS1 DAY4(5/3)】
WS1 DAY4のワークショップでは、今回のワークショップの締めくくりとして、プレゼンテーション形式で各チームが地域イノベーションのアイディア発表(地域の魅力・課題、未来の移住者像、事業の内容など)を行いました。グループごとに打ち合わせを三十分行ったのち、各グループそれぞれ8分ずつ発表し、最後に他グループからのフィードバックを元にして発表の振り返り・総括を行いました。

DAY4を通して感じたことは、まずはグループのアイディアがしっかりと形となったことに達成感と安堵を感じました。私が所属したグループはday1からday4までで計4回PDCAサイクルを回したため、途中でうまくいくのか不安になることもありましたが、結果的に一つのアイディアを生み出せたことは率直に良かったと思いました。また、他のグループの発表を見たり、フィードバックを受けたりしたことで、グループ内の議論だけでは気付けなかった新たな観点やアイデアの長所・短所を発見できたことも非常に意味のあることだったと感じました。例えば我々のグループでは自給自足に関連するアイディアを提案しましたが、フィードバックからの指摘により、グループ内で言葉の定義のレベルまで同意が取りきれていなかった問題点があったことに気づかされました。

ワークショップ全体の進め方を振り返ると、イノベーション事例分析、移住者分析、アイデア発想、アイデアの評価という一連のプロセスを再度見直し、やり直しを設計するということの重要性を非常に感じました。私のグループでは何度もやり直しを行いましたが、振り返って考えると、1〜3度目のやり直しの設計よりも、4度目のやり直しの設計の方が遥に改善の度合いが大きく、それに伴ってアイディアのレベルも大きく改善されたと思います。つまり、それぞれのプロセスでベストを尽くし、あとは回数を繰り返せばいいというわけではなく、やり直しの設計自体による改善度にアイディアの質自体が左右さえかねないと痛感しました。やり直しの質を担保するために必要なことの一つとして、上記のプロセスの内容を考える視点と、議論をいかに進めていくかというメタ認知的な視点の両者を同時に持ちながら議論を進めることが考えられると思います。他にもやり直しの質を高める要因があるのか、引き続き探求していきたいです。また、「どうしたらパッとしたアイディアが生まれるか、そもそもパッとしたアイディアとは何か」という観点も考察の余地が多分にあると感じており、その点の探究も行っていきたいです。

ワークショップで扱った内容自体に感じたこととしては、地域イノベーションに人が重要な役割を果たすという観点に着目できるまでに私自身時間がかかってしまったと感じました。移住者と未来、地域がうまく結びついたときに、いいアイデアが生まれたと感じています。事業自体のアイディアだけでなく、それをどんな未来で、どんな人が、なぜ行うのか、という深い議論が必要でした。今回のワークショップで得た知見を次回以降のワークショップにも活かして参ります。

辻野好宏
2020年度i.school通年生
東京大学 経済学部経済学科 4年

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