Workshop Reports

Jun 27, 2020

参加者レポート
2020年度第2回レギュラー・ワークショップ
「お金との付き合い方のデザイン」

第2回レギュラー・ワークショップは、i.schoolの第1期生で、イノベーションのコンサルティング事業を展開しているi.labの代表、さらにはi.schoolのディレクターでもある横田幸信によるファシリテーションで実施しました。

テーマ:お金との付き合い方のデザイン
ファシリテーター:横田 幸信(i.school ディレクター、i.labマネージング・ディレクター )
日程:5/13(水)、5/23(土)、5/27(水)、5/30(土)
水:19:00 – 22:00、土:13:00 – 17:00

【2020年度 WS2 Day1(5/13)】
WS2のDAY1は、①オリエンテーション、②初期視点の理解、③インタビュー調査設計、という3点がこの日の主な内容でした。今回のワークショップのファシリテーターは、i.lab共同創業者/代表取締役であり、かつ、i.schoolのディレクターとして私たちがお世話になっている横田幸信さんです。

①オリエンテーション
まず、横田さんご自身の経歴や多岐にわたる活動内容、イノベーション教育に対する考え方等についてのお話を伺いました。今回のワークショップではオンラインの特性を最大限生かした活動を行うという指針の下、講義中にもZoomのチャット機能を用いて積極的に参加者が質問や考察を述べ、一方通行で話を聞くのではなく、非常にインタラクティブな時間となりました。続いて、実践編と学習編それぞれにおけるWS2の目標についてのお話を伺いました。設定目標を常に意識してブレインストーミングやインタビューを踏まえた考察、発想に取り組んでいきたいです。また、中盤にはブレークアウトセッションに移り、チームビルディングを行いました。「タイムレンジャー」に登場する、様々な特徴を持つ5色の登場人物に例えると自分はどの色の特性に近いかをチームメイトに紹介するという方法で、自己紹介を行いました。自分にとっては初めての自己紹介方法でしたが、仲間の特徴を端的に分かりやすく知ることができ、とても有効かつ場の和む楽しいチームビルディング方法だと感じました。

②初期視点の理解
次に、初期視点の理解・設定を行いました。まず「機会領域」とはどのようなもので、どのような機能を持っているかについて学んだ後、マクロな事象により市場等の環境の性質が非線形に変化する理由に目を付け、初期視点を探る有効性について学びました。それらをふまえて、チームごとにApisnoteを用いたワークを行いました。ワーク内容は、事前課題や自分のこれまでの経験や知識を用いて、初期視点の議論と設定を行うことでした。WS2初日であるにも関わらず、スムーズなチームワークを発揮し、多数の意見が出されて議論も盛り上がりました。

③インタビュー調査設計
初期視点をチームで設定した後、インタビューの調査設計と題して2つ目のワークを行いました。ワーク内容は、インタビュー対象者とインタビュー質問の設定を行うことでした。再びチームごとにApisnoteを用いて、有効な質問内容や、自分たちの設定した初期視点に沿う対象者の属性をリストアップしました。ワークショップを一旦閉じた後に開催された公式懇親会にて、具体的にどのような人物にインタビューをお願いできそうか、チームメイトの知り合いにインタビューをお願いできそうなマルチジョブワーカーはいるか、といった点について話し合い、インタビュー対象者を決定しました。
以上が5月13日水曜日の活動内容です。次回ワークショップまでに、実際にインタビューを行うことになりました。各自、事前課題にも取り組みつつ、質問内容を充実させるなど、インタビューに向けての準備にも尽力していきたいと思いました。

吉井小絢
2020年度i.school通年生
慶應義塾大学 経済学部経済学科 4年

【2020年度 WS2 Day2(5/23)】
Day1からの10日間で、グループごとに1〜2人へインタビューを実施しました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。Day2では、インタビューから、マルチジョブワーカーやお金に関する重要な示唆を導きました。

① チェックイン
冒頭、ファシリテーター横田さんから、学生時代にTシャツを150枚作った経験を紹介されました。
「クリエイティブ活動を持続するのは、つらいけど楽しい。」WS1で産みの苦しみを味わった通年生の心に響く内容でした。さらに、WS2のゴールを実践と学習の両面から、再確認しました。学習目標のひとつとして「日常生活での違和感センサーの感度を上げる」ことが挙げられました。今回の解釈導出では、特に重要になるスキルだと感じました。

② 重要事実の書き出し
つづいて、インタビューの分析です。まずは1人あたり7個、インタビューで共感や違和感など、感情を動かされた事実を書き出しました。重要事実について「どうしてそのように考えるのだろう、インタビューで聞いておけばよかったな」と感じることが多々ありました。

③ 解釈導出
続いて、60分のグループワークで重要事実から解釈を引き出します。解釈は、重要事実から十分合理的に導かれる言い換えで、仮説よりも事実に近く、例えばインタビュー対象者に「つまり、…ということですね?」と聞けば「そうです!」と即答されるもの、と説明されました。この感覚を共有するのが難しく、私のチームでは「私の意見が入っちゃってますね」と、発言者自ら、発見のありそうな内容を解釈として採用しないことがありました。
解釈は事実から合理的に導かなければならない一方で、共感や違和感を薄めないよう、自身の感情にも注意しなければならなかったのが難しかったと感じます。例えば、「仕事中にぶどうを食べるのが好き」と「仕事中にみかんを食べるのも好き」という事実を聞き、違和感を覚えたとします。

A. 論理的すぎる
「果物が好き」という解釈には抽象化として間違いはありません。論理に基づいていて十分合理的です。しかし、実は自分が「仕事中にそんなに食べるか?普通おやつの時間取るやろ」と無自覚に思っていたとすると、「果物が好き」という解釈はせっかく感じた違和感を薄めてしまっており、もったいないといえます。また、「酸っぱいもん食べるなあ」と違和感を感じていた可能性もあり、その場合も「果物」という抽象化はもったいないといえます。

B. 感情に基づいた論理性がある
「自分は仕事中にものを食べることに違和感を感じたんだった」と自覚した上で、「仕事中に何か食べるのが好き」という解釈を与えたほうがよいと考えられます。こちらの解釈には「ここがおかしい、違和感ある」という自分の意見は入っていますが、導き方に論理の飛躍はなく、十分合理的です。

C. 感情的すぎる
一方で「なぜ仕事中にものを食べるんだろう?」と推測をはじめ、「食べることでしかストレスを解消できないので、仕事中に何かを食べるのが好きである」とするのは、前半が事実に基づいておらず、解釈とはいえないのかもしれません。

このように、解釈の方向性は感情に基づいて決めても、解釈の方法は論理的である必要があるのでは、と感じました。

④ 示唆導出
目的とターゲットを絞る機会領域の一歩手前として、事実と解釈から示唆を導出します。示唆は、事実というより仮説寄りで発見や驚きがあるものと説明されました。

私のチームでは、インタビュー対象者さえ自覚していなさそうな価値観やアイデアの種が多数提示されました。次回は、示唆を用いて機会領域を決定します。それまでに事実と解釈を見直し、示唆をブラッシュアップすることになりました。
他グループの示唆や解釈の出し方も参考にして、再度示唆を出し直したいと思いました。

豊島 拓
2020年度i.school通年生
東京大学大学院 工学系研究科
航空宇宙工学専攻(岩崎研究室)修士1年

【2020年度 WS2 Day3(5/27)】
今日のWSは、横田さんのお仕事の仕方のご紹介から始まりました。かつて大手企業に勤めていらしたとき、目の前の仕事にしっかり取り組んで周囲の信頼を得られるよう意識しながら、同時に自分なりの新しい可能性を探せるようなポジションを探していたとのお話でした。今こうしてマルチワーカーとして様々な分野を手掛けていらっしゃるのも、昔から広い視野を持とうと努力されていた賜物なのだと感じました。

さて、実際のワークについてですが、講義の初めに、改めて「解釈」と「示唆」に関するアドバイスをいただきました。前回は、初めてインタビューの解釈と示唆を考えましたが、私たちはなかなか苦戦していたため、今回の宿題は解釈をより深く考え直してくることでした。頭で概念がわかっていても、実際に行うことは容易ではなく、解釈や示唆がときに単なる要約となってしまいます。しかし、そうではなく、情報の足りない部分も推測したうえで、全体からどんなことが言えるのか、を考えることが必要なのです。

私を含め、思うようにいかず悩んでいる参加者も少なくなかったのですが、インタビューの際にはいつも、話を聞きながら解釈を考える習慣をつけることで、より深い情報を得、良い示唆を出せるようになるのだと教えていただきました。私も実践していきたいと思っています。

そして、今回のメインタスクは、初期視点を「機会領域」に進化させることでした。機会領域は、初期視点を定めた後に新たに得た情報から、課題を構造化していく中で見つける、イノベーションを起こせる可能性やその需要があるエリアです。特に、ターゲット・目的・手段の中から2つくらいの情報がそろうとちょうど良い機会領域となります。
今回のWSでは、個人で機会領域の案出しをしたあとに、チームごとに最も良いものを決める予定でした。しかし、私たちのチームでは一つに絞りこめないところで終わってしまいました。

横田さんは、各チームが出した機会領域について詳細なフィードバックを下さりました。よく見られたのが、「抽象的すぎる」「インタビューで得られたファクトを利用しきれていない」といったことでした。抽象的すぎるとアイデアに落とし込みにくいですし、インタビュー前から想像がつくような当たり前のことだと、インタビューで得られた「解釈」を利用していないことになり、自分たちなりの視点が欠けてしまいます。
各チームの発表と、それに対するアドバイスを聞くことは、私たちがこれから目指すべき方向性の参考になりました。

WS2は、個人的に興味があるテーマであるのと、実際に行ったインタビューで非常に面白いお話を聞けたことから、アイデアを出すことにとてもワクワクしました。
難しい概念や考え方もありますが、イノベーションを起こす体系的な方法論として、大変勉強になっています。頭をできるだけたくさん使って、このプロセスに慣れていきたいと思っています。

杉浦由佳
2020年度i.school通年生
東京大学大学院 農学生命科学研究科 修士2年

【2020年度 WS2 Day4(5/30)】
Day4はWS2の締めくくりとして、前回決定した機会領域をもとに、①手段分析、②アイデア出し、③アイデア評価と選抜、④アイデアの精錬、⑤プレゼンを行いました。

①手段分析
Day3では、機会領域としてWhat(目的)とWhere(ターゲット)をある程度の抽象度で定めましたが、今回は事前課題として、機会領域と似た目的を果たしている既存のサービス事例を各自調べてきました。チーム内で持ち寄った事例の概要を共有したうえで、それぞれの事例がどのような手段で目的を果たしているか、構造的に分析し、示唆を抽出しました。

②アイデア出し
i.schoolでは、アイデアは「目的×手段」と考えます。今回は機会領域(目的・ターゲット)と、①で分析した手段の組み合わせを意識してアイデアを強制発想しました。

③アイデア評価と選抜
チーム内でアイデアを発表し合い、「新規性」と「有効性」を軸にアイデアを評価し、チームとして扱うアイデアを1つに絞りました。

④アイデアの精錬
アイデアを精錬する際には、ヒト・モノ・コトのフレームワークで情報を具体化していきました。「ヒト」はユーザー像や課題認識、「モノ」はサービスの機能、デザイン、提供価値、「コト」は利用シーンや体験フローを指します。

⑤プレゼン
最後に、各チームこれまでのプロセスとアイデアについて簡単に発表し、横田さんや堀井先生からフィードバックを頂きました。自身のチームのアイデアは次の通りです。

「やりたいこと・夢を起点にフリーランスOBに会えるフリーランス転身支援のためのOB訪問アプリ」

その他、「駆け出しのマルチジョブワーカーがスキルアップのためにランダムに組まれたチームで参加する地方創生事業開発コンペ」や「フリーランサーが仕事と育児を両立するために、複数のフリーランス家族が共同生活して子育てを助け合う住居」等、多様なアイデアが出ました。

以上がDay4の活動内容です。今回のワークショップでは、実際にエクストリームユーザーインタビューを行い、機会領域を定めるための示唆を得るプロセスを重点的に学びました。インタビューを1件行うにしても、なんとなく気になることを質問すればいいのではなく、まず初期視点を機会領域にアップデートするために明らかにしたいことを考え、その切り口でお話が聞けそうなインタビュー対象者の属性を考え、またどのような質問をすれば上手く示唆深いお話が聞けるかを考え、たくさん想像と思考と議論を重ねる必要がありました。準備は大変でしたが、定めた観点について良い意味で予想外のお話が聞けたことには喜びを感じましたし、馴染みの薄いテーマだったからこそ「人間中心」とはこういうことかと実感することができたのは大きな学びでした。

一方で難しく感じたのは、最終的に「お金との付き合い方」に着地することをどの段階でどの程度意識しておくべきかということです。私たちのチームが出したアイデアは「お金との付き合い方」というテーマとの関連性が薄くなってしまい、最終成果物としては課題の残るものになりました。1つ1つのプロセスを振り返って、まずは自分なりにじっくり考えてみようと思いました。

柳川悠香
2020年度i.school通年生
一橋大学 商学部商学科 4年

【スポンサー企業ご参加者の声】
最終日、「これがもし世の中に実在したら絶対に楽しいぞ」と思いながらアイデアを共有できたことが強く印象に残っています。

0から新たなアイデアを創出するというお題に対し、当初はその不確実さから来る漠然とした不安感を持っていたものの、初期視点の設定、エクストリームユーザーへのインタビュー、機会領域の設定、といった段階をチームのメンバーと共に経験することで、そうした不確実さにむしろ面白みを感じるように変化していったことは新鮮な驚きでした。

いわばそれらに守られ甘やかされてきたところの自明な根拠・計画から離れ、先行者に共感しながらこの先の未来を想像し彫塑していくこと。

緩やかに安定したこれまでの私を取り巻く関係性から一歩踏み出し、視座の高い大学生と意見を交わし、協同して、アイデアを磨き上げていくこと。

いずれもこのワークショップで経験した「枠の外へ飛び出す」機会領域の設定とオーバーラップし、脳味噌が洗われるような刺激的な体験になりました。

今回得た、未来を感じさせるちょっとした違和感を捉える感性の芽を今後UXデザイナーとして精進する中でさらに育て、未来をリードするようなサービスづくりに活かしていきます。
この度は貴重な機会をくださり、ありがとうございました。

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
イノベーションセンター デザイン部門
桑原 楓様

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