Workshop Reports

Jul 30, 2020

参加者レポート
2020年度第4回レギュラー・ワークショップ
「with災害時代の食生活の未来」

第4回レギュラー・ワークショップは、i.schoolの設立当初から取り入れている「未来洞察」のイノベーションワークシップを日本総研の橘田氏ファシリテーションで実施しました。

テーマ:with災害時代の食生活の未来
ファシリテーター:株式会社日本総合研究所 橘田尚明氏、ほか
日程:
7/6(月)19:00-22:00
7/10(金) ‐ 7/11(土) 9:00-18:00


【2020年度 WS4 DAY1(7/6)】

今回のテーマは「with災害時代の食生活の未来」です。

まず冒頭に、日本総研の橘田さんより目的・趣旨についてお話しいただきました。未来の変化を見立てるためには、従来型の発想法では「想定外の変化」を見誤る傾向があること。そのために、現在すでに起こっている小さな変化の兆しを読み取り、非連続な変化や不確実な未来を見立てることが重要であること。そして、未来を見立てるための具体的な手法についてお話しいただき、非常に濃い内容でした。

その後、ワークショップは、
①各自が作成した「未来イシュー」をグループごとに共有する
②複数の「未来イシュー」の関係性から、その背景にある大きな「変化の軸」を洞察する
③全体でグループごとに出た「変化の軸」を共有する
という流れで進行しました。

私たちのチームでは、「食サービス内容の自動化」や「個人個人に最適化した食のオプションの提供」といった「未来イシュー」から、「栄養素で取引される食」などの「変化の軸」を洞察しました。「食サービス内容の自動化」 は、個人が意識的に食事を選択・摂取することに特化している一方、「個人個人に最適化した食のオプションの提供」では、食事を無意識に消費することに特化しているという相違点を明らかにしたうえで、双方を両立しうる「変化の軸」は何か、というところから発想しました。

また、グループでの議論では、「変化の軸」の内容を具体的に掘り下げている過程に、面白くも難しさを感じました。実際に何が変わるのか(変化の主体)、現状と未来の違い、変化後の未来の姿について、各自の想像だけではなく発想の元となった事実に基づきながら組み立てていく作業は新鮮でした。

他のチームの発表では、「食材や食の概念・範囲が広がる」、「食材のプロシューマー同士がダイレクトにつながる」、「消費者の意識の変化(見た目から中身へ)」といった「変化の軸」が出ていました。一見しただけではイメージしにくいものですが、それぞれのチームの代表者からの説明を聞き、なるほどと感じるものばかりでした。

以上が今回の活動内容です。

災害に限らず、これまで「想定外」とされてきた事象を、もはや日常の一部として捉えた時に、未来像をどうすれば描けるのかは非常に難しい課題であると思います。

今回のDAY1での活動や事前課題からは、現在の小さな変化の兆しを読み取れる観察眼の大切さを、特に学ぶことができました。

平岩 渉
2020年度 i.school通年生
東京大学大学院 人文社会系研究科修士2年

【2020年度 WS4 DAY2(7/10)】
WS1からすべてのWSに共通して、新しい発想を生むために「常識の枠を超える」手法を学んできました。

今回のWS4は未来洞察という強制発想の手法です。
 WS1 – アナロジー発想
 WS2 – エクストリームユーザーインタビュー
 WS3 – 非人間中心主義といった新しい考え方の導入
 WS4 – 未来洞察

未来洞察では、確度の高い未来の姿(未来イシュー)と、 確度は低いが起こり得る想定外の未来の姿(想定外社会変化仮説)を掛け合わせてアイディアを出します。現在の延長線上である未来イシューは、現在からジャンプした想定外社会変化仮説を想定することで、影響を受けて変化するはずです。その変化した未来イシューが、新規性のあるアイディアにつながるヒントとなるのです。

DAY2では、事前課題で各自が選んだスキャニングマテリアルから想定外社会変化仮説の作成と強制発想によるアイディア出しを実施しました。スキャニングマテリアルとは、想定外の変化の兆しを直観的に掴むために、探索的に広く浅く情報収集した記事や文献のことです。

想定外社会変化仮説の作成では、全員が納得できるような仮説は想定外ではないため、むしろ違和感を増幅するように考えようとアドバイスをいただきました。それでも、現在の常識によって想定内に揺り戻された部分があったと反省しています。全体のプロセスから振り返ると、アイディアの新規性を出す要素はこの仮説なので、ここで尖った内容を詰めることが重要だったのだと思います。良いアイディアは良いプロセスから、ということを実感しました。

未来洞察でのアイディア出しでは、具体的な人物像をイメージしながら発想していきました。未来イシューと想定外社会変化仮説の両方を取り入れることが肝で、かつ難しい点でした。ここでの学びは、新規性にこだわる姿勢です。課題を時間内に終わらせる、チームの雰囲気を良くするといったことに重点を置いてしまったため、アイディアにツッコミを入れて新規性のある中身にブラッシュアップすることにエネルギーを割けませんでした。

i.schoolを通して得たいこと、イノベーティブなアイディアを生み出す発想法を習得すること、それに立ち返って、引き続き全力で吸収したいと思いました。

森田楓
2020年度 i.school通年生
東京大学大学院 学際情報学府 修士1年

【2020年度 WS4 DAY3(7/11)】
DAY2では、事実や仮説の延長から考えた「未来イシュー」と、スキャニングを用いて想定外の社会の変化を発見することを目的とした「想定外社会変化仮説」をそれぞれ三つずつ選び、それらを掛け合わせることで機械領域の要素となりうるアイデア群を出しました。

それに続いて、DAY3の前半はそうしたアイデア群の中にコンテクストを読み取って機械領域として統合し、その機械領域をもとにして未来シナリオを作成しました。また、後半では作成した未来シナリオをもとに、各チームがスキットを含むプレゼンテーションの形式で発表しました。

我々の班では「食のファブレスト化」「食の個別化」という未来イシュー、「相手に伝える情報を選べる仮想空間での生活」「身体のアプリケーション化」という想定外社会変化仮説から、「手軽に楽しめるあなただけの完全食」という機械領域を設定し、未来シナリオを作成しました。他の班では、「感覚・味覚の外的コントロール」「味覚を編集して世界をエディブルに」「栄養と感覚を選択して摂取できるようになる」といった機械領域が発表されていました。

個人的に最も印象的であったのは機械領域の作成過程でした。未来イシューと想定外社会変化仮説を掛け合わせて出した幾つものアイデアの中からコンテクストを読み取る際に、そこでの読み取り方次第で機械領域の方向性が大きく左右されるであろうと感じました。アイデアでは斬新なものが出ていたが最終的にはありきたりの領域に落ち着いてしまう、ということがないように注意しながら機械領域の作成を行いました。

チームの反省点として、今回のテーマである災害というキーワードを意識するタイミングが難しかったと感じました。例えば上記の機械領域を作成する際においても、災害というキーワードを意識するように心がけながら選定する必要がありました。個人での反省点としては、未来イシューの選定においてスキャニングのような観点で元の資料を選んでしまった節があるため、想定外社会変化仮説との差異が小さくなってしまったかもしれないと感じました。より「食と災害」にフォーカスして資料集めをすれば良かったかもしれないと感じています。

ワークショップ全体の構造設計について、未来洞察の非常に役立つ手法を教えていただいたと感じています。現在から線形的・演繹的に導かれる未来を考える「未来イシュー」、現在からは離れた非線形的・帰納的に導かれる未来を考える「想定外社会変化仮説」、それらをアブダクションによって結びつけて導き出す「機械領域」という構造は、実現性とバイアスブレイキング間のジレンマが生じた場合に上手に解決しうる手段として非常に役立ちそうだと感じました。

今回のワークショップでは、そうした未来洞察の手法を学べたことにとどまらず、食と災害という非常に重要だけれどもあまり時間を取って考えたことがなかった課題について議論ができたという点でも、貴重な体験ができたと感じています。今回の経験をもとに今後もwith災害時代の生活のあり方に今までよりも意識を向けてみたいと感じました。

辻野好宏
2020年度 i.school通年生
東京大学 経済学部経済学科 四年

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