Workshop Reports

Jul 1, 2020

参加者レポート
2020年度第3回レギュラー・ワークショップ
「サスティナビリティをデザインする -「非人間中心」の社会システム-」

第3回レギュラー・ワークショップは、i.schoolの設立当初よりイノベーションワークショップをご提供いただいている株式会社日立製作所のデザインチームによるファシリテーションで実施しました。

テーマ:サステナビリティをデザインする
ファシリテーター:柴田吉隆氏 他(株式会社日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ ビジョンデザイン部 主管デザイナー)
日程:6/3(水)、6/10(水)、6/17(水)、6/27(土)
水:19:00 –22:00 土:10:00 –17:00

【2020年度 WS3 DAY1(6/3)】
「サステナビリティをデザインする」というテーマのもと,4日間にわたるワークショップWS3が始まりました.今回のワークショップは,株式会社日立製作所に勤務されている,佐々木さん,池ヶ谷さん,柴田さんの計3名の方がファシリテーターとなって行われました.Day1では,以下のような流れでワークショップを行いました.

①Introduction
②非人間中心という考え方について
③事前課題の共有
④人間中心ではないことの意味の探索
⑤全体での共有

①Introduction
今回のワークショップの背景や目的,そして,日立さんが取り組まれている活動について紹介していただきました.

②非人間中心という考え方について
「非人間中心」とは一体どういうことなのかについて,文化人類学的観点を交えてご説明いただきました.

③事前課題の共有
今回の事前課題は,「人間が中心なわけじゃないんだな」と感じられるモノ・コトを探してくるというものでした.各自考えてきたことをチームで共有しながら,得た気づきをメモしていきました.

④人間中心ではないことの意味の探索
③において出された事例の共通点を探し,意味的に似たものを近くにおいて分類しました.このとき,表面的な性質の類似によって分類するのではなく,構造や仕組みなどの本質的な部分に着目するよう意識しました.

⑤全体での共有
④にてチームで出された分類を全体で共有し,フィードバックをいただきました.
「非人間中心ってどういう意味だろう」そう悩みながら,このワークショップは始まりました.実際,チームで事前課題を共有するなかでも,人間が抗うことのできない「重力」などの自然法則や,本来の用途ではない方法でものが使用される例,人間以外の生物が中心の世界に人間が入り込む体験など,様々な観点から考え出されたものが挙がりました.しかしながら,これらの共通点を考えて議論していくなかで,徐々にではあるものの,「非人間中心とは何か」が具体的になっていきました.この共通点を考える際に着目するのが,人間の代わりに何が中心に置かれており,そして何が脇に置かれているのかということです.これらを議論することがday1の大きな目標でした.

私の所属するチームでは,機械語プログラミングの事例から意図しない主体の逆転が起こっているのではないかという話や,水族館と比較してスキューバダイビングでは自然が中心に置かれており人間の生活・利便性が脇に置かれているのではないかという議論など,数多くの興味深い発見がありました.他にも,今回のワークショップの趣旨からは少し外れますが,科学技術を進歩させることによって,元来自然が中心だったこの世界を人間中心に寄せてきているのだなという話も挙がりました.

一方で,今回のワークショップではサステナビリティを目指すうえで「非人間中心」という考え方を用いておりますが,サステナビリティを目指すということ自体が人間中心の考え方ではないかという疑問が残っております.

そのため,アイデアを実際に生み出す段階になったとき,この疑問を踏まえたうえで「非人間中心とは何か」について再度考え直す必要があると思っております.

また,この「ずらす」とはどういうことかという抽象的な議論と新たなアイデアの創発の間には未だギャップがあるように思えるため,そこをどのようにして埋めていくのか考えていこうと思いました.

関本 大勢
2020年度 i.school通年生
東京大学 後期教養学部 統合自然科学科 認知行動科学コース 学部3年

【2020年度 WS3 DAY2(6/10)】
Dayのワークショップの流れは次の通りです。

①Day1のおさらい
②「ずらす」の選定
③「ペン」に「ズラす」を適用したアイデアを考える
④「駅」に「ズラす」を適用したアイデアを考える
⑤全体での共有
です.以下では各項目について振り返っていきます.


①Day1のおさらい
Day1では「人間中心からズラす」ことをテーマに「ズラすって○○だ」の○○を各班で数個にまとめました.

②「ずらす」の選定
各班で「ズラすって○○だ」の○○を1つに定めました.私たちの班では「ここでは決め打ちで決めよう」という話になり「ズラすって逃げること・諦めることだ」で決めましたが,結果的に③④のプロセスで苦戦することになりました.

③「ペン」に「ズラす」を適用したアイデアを考える
「ペン」を例に「ズラすこと」でアイデアを考える練習をしました.具体的には,
❶ ペンの特徴を3個に絞る
❷ 各特徴を構成する要素を列挙する
❸ ❷で列挙されたものを「ズラす」ことでアイデアを考える
(❹アイデアを評価する)
の流れです.
初めは何をやっているのか掴めずという状態でしたが,手を動かすうちにだんだん分かってくるようなエクササイズでした.❶や❷の要素がどれくらい人間中心であるかによってアイデアの出し方が変わることや,❷と❸は常に行き来するものだということを感覚的に理解していきました.

④「駅」に「ズラす」を適用したアイデアを考える
「ペン」を今度は「駅」に置き換えて③と同様の流れで「駅」というシステムに関するアイデアを出しました.
私のグルーブでは,テーマが考えれば考えるほど抽象的で,また③での反省から「非人間的なアプローチがしやすい特徴をだすべきなのか?」といった議論に少し時間を使ってしまったこともあり,時間内にワークを納得いくまで完成させることはできませんでした.

⑤全体での共有
全体で共有しました.

前半のワークでは「サスティナブル」のアイデアを考えているという意識から少し離れていたこともあり,「人間中心から離れること」を意識し切れていなかった印象があります.途中のDPの方からの「サスティナブルへの意識」に関する提言後は,しっかり「人間中心から離れているか」を意識し続けられておりましたが,同時に意識したゆえの難しさを感じていました.

全体的に,ワークでやるべきことや「アイデアが出てくるプロセス」は理解できましたが,実際にアイデアを出し切る難しさを感じました.Day2を終えた状態でDay1の「ズラすって○○だ」を考えるワークをするとまた答えは変わってくるかもしれないかと感じました.

ワークを進めていく中でだんだん「アイデアを出すプロセスにつながっていく」感覚を掴めており大変ワクワクしました.今後も納得のいくアイデアにたどり着けるよう精進したいと感じました.

佐々木佑介
2020年度 i.school通年生
東京大学大学院学際情報学府M1

【2020年度 WS3 DAY3(6/17)】
Day3のワークショップの流れは次の通りです。

①「駅」のアイデアを深堀り、整理する
②全体で共有
③「駅」のアイデアをサービスとして考える
④全体で共有

短い時間の中で新しい「非人間中心」的駅を考えるという難しいアウトプットに対し、納得のいくアイデアが出なかった班も多く、DAY2とDAY3の間に振り返りの総括的分析が自主的に行われたようです。自分の班でもこれまでに行われた議論や論点の整理などが行われました。身近な現象から新しいアイデア発想までのプロセスを言語化して統一し、今回改めてワークショップに取り組みました。

①、③の流れは以下の通りです。

①「駅」のアイデアを深堀り、整理する
前回までにそれぞれの班で選んだ「ずらすって〇〇だ」を使い、人間 中心ではない駅のアイデアを考えていきました。私たちの班では、駅の特徴をブレスト形式であげた後、それらを一度「人間中心」という観点から抽象化しそれを「ずらす」ことでアイデア創出に取り組みました。アイデアを一つ選んだ後は、そのアイデアがなぜ良いのか、他の考え方や付随的なシステムがつけられないか、等を検討しました。

③「駅」のアイデアをサービスとして考える
①で選んだアイデアをより具現化する作業です。この作業をするにあたり、以下の4つのステップを50分で踏んでいきました。

(i)ステークホルダーを列挙
サービスの利用シーンや、生活導線などを想像しな がら、関係しそうな周囲の利害関係者(家族、友人、職 場の同僚など) 、関係組織、あるいは関連するサービスまで、思いつくものをひたすら列挙しました。

(ii)グルーピング
ここでステークホルダーの置かれている状況を確認していきました。

(iii)関係するものを線で結ぶ
どんな価値交換がなされているのか、お金なのか情報なのか、などを線で結んで関係を考えていきました。

(iv)関係の検証
サービス利用者、提供者の両側からWIN-WINの 関係になっているかの確認。
ーー

DAY2までは抽象的なワードが飛び交い、またそれらの言葉の関係性もあまり共通認識が取れておらずもやもやしていた部分がありましたが、DAY2とDAY3の間に自分たちのアイデア創出方法を振り返る分析を行い、議論に筋道が見えた気がしました。

相手が発しているワードをより解像度の高い言葉で置き換えられること、言葉どうしの関係性を理解することがより深い理解につながることを身をもって学べた気がします。

その成果もあり、①は以前よりスムーズになり、結果として③も活発に行えた印象があります。そして余裕が生まれたせいか、DAY3はDAY2と同程度に時間が厳しい中でも、雑談を交わしながらワークショップを進めていくことができ、それも結果としてチームワークの向上/良質なアウトプットにつながったのかなと感じました。

DAY4はいよいよプロトタイプを作成するということで、大変ワクワクしました。ワクワクを忘れずに取り組むことを意識して、今後も取り組んでいきたいと感じております。

合田智揮
2020年度 i.school通年生
東京大学工学部都市工学科4年

【2020年度 WS3 DAY4(6/27)】
「サステナビリティをデザインする」というテーマのWS3の4日目、最終日です。

DAY3までに「非人間中心」的に考えてきた駅のアイデアを具体的なサービスとして考え、プロトタイプをつくり、発表を行いました。

私たちのチームは、人間と「生態系」を運ぶ自然であふれる駅と電車というアイデアを考えました。はじめのアイデアとしては、電車の上に植物を生やしたら面白そうだよね、というところから始まったのですが、具体的にサービスを考える段階で、植物にとっての価値と人間にとっての価値をどちらも中心に持つというチームの方向性に沿ってアイデアが定まってきました。

プロトタイプ製作では、オンラインではありましたが、チームメンバーの1人が実際に駅と電車の模型をつくり、サービスの様子を捉えやすいものにしてくれました。また、サービスに登場する、植物、虫、人のストーリーを具体的に考えることで、よりサービスを想像しやすくすることができました。個人的に、最近はまっていて好きなアリがこのサービスの恩恵を受けられるという話をからめることができて嬉しく思っていました。

他のチームの発表では、「陽の光に合わせて運行する電車」、「電車が自己を持ち、自由に時間・ルート・停車場を決める世界」、「動物が集まり、食を通じて動物と共生する駅」、「晴れの日のみ運行する電車」といった非人間的なものを中心として考えたアイデアが出ていました。

以上が最終日の活動内容です。

今回のワークショップでは、人間中心だったデザインの視点をずらして「非人間中心」について考えることで、これまでとは違った「サステイナブルな社会」のアイデアを創出しました。普段、非人間的なものを中心として物事を考えることはあまりないため、どうしても人間中心に考えてしまう傾向があり、アイデアを具体的に考えたり、評価する段階では難しい思いをしました。

また、時間的な制約もあったために、サステナビリティについてチーム内で認識をあまり共有できず、表面的な議論になってしまっていた点も、反省して今後のWSに生かしていきたいと思います。今回のWSでは、今まであまり考えてこなかった新しいものの見方でアイデアを考える、面白い体験をすることができました。

甘粕隆志
2020年度 i.school通年生
東京大学工学部計数工学科4年

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